Mar 8, 2013

drawing ink





久しぶりに制作行程の話。

革のコバ(裁断面)の処理については以前にもお話ししておりますが、
今回は少し違った視点からご紹介します。


革の染色には大きく分けて、
革の内側まで染める”芯通し”と
革の表面だけを染める”ナカシロ”の二種類があります。


今回は特に後者のナカシロ(表面だけの染色の為、
断面が白い事からナカシロと呼ぶそうです)の革のコバ処理を説明します。

この処理方法はあくまでも私のオリジナルのやり方なので、
作り手によっては全く別の方法で行っていると思いますし、
革の種類によっても異なってきます。




上記写真の革はベージュベースの革の表面をグレーで染色しています。
左側の断面が白っぽいのがお分かり頂けると思います。

ちなみにこちらが芯通しの革です。
革の内側まで染色されています。



私が制作するバッグは、基本的に革の断面をむき出しにせず、
バスコというコバ仕上げ用塗り液で色を着けます。
この塗り液は革の内部に浸透する物ではなく、
表面に色を乗せているだけなので摩擦等で剥がれてしまいます。

剥がれた時、革の断面が白いより、革表面の色に近い方が
違和感無くご使用頂けるので、
下処理として下記写真のdrawing inkを使用します。
このインクはデザイン、描画に用いるもので、革用の資材ではありませんが、
革断面に浸透し、乾くと油性になり、また革用の染料より色数が豊富なので、
試行錯誤の末に辿り着いた道具です。

下記写真右側がこのインクで下処理した箇所です。
これで、仕上げのバスコが剥がれても白くならずにすみます。


 スポイトになっているので、必要量だけ出せるのも嬉しいポイント。


 drawing inkで下処理染色をした後、バスコ用の目止め液を塗り、布で磨きます。
この液は、この後に塗るバスコの定着を強くします。


その後グレーの仕上げ用塗り液(バスコ)を塗り、
写真はございませんが、さらに蜜ロウを塗り、
小型のアイロンで蜜ロウを溶かし、布で磨いてツルツルに仕上げます。


コバ処理は、商品になった時、真っ先に見られる箇所ではないですが、
地味に時間と労力を費やし、仕上がりをも左右する重要な作業です。



深夜の頭では、ちゃんと説明出来ているのか不安ですが、
一番お伝えしたかったのは、専用の道具、資材にとらわれず、
drawing inkに辿り着けて嬉しかった、というお話です・・・。










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