未来を知りたがるらくだ使いと千里眼の会話。
おまえはなぜ未来のことに、そんなに興味があるのかとたずねた。
「ええと、・・・・・・なにかできるようにですよ」と彼は答えた。
「そして、そうすれば起こってほしくないことを変えられるからです」
「でも、変えることができるものなら、それはおまえの将来の一部ではないということではないか」とその千里眼は言った。
「ではきっと、起こることに前もって準備するために、将来を知りたいのです」
「もし良いことが来るなら、それは嬉しい驚きということになるだろう」と千里眼は言った。
「もし、悪いことが起こることになっていて、それを前もって知っていたら、おまえさんは、まだ起こらない前から、苦しまなければならないだろう」
「私は男だから、未来のことを知りたいのです」とらくだ使いは千里眼に言った。
「男はいつも未来にもとづいて、人生を生きているのです」
千里眼は占い棒を投げる達人だった。彼は占い棒を地面に投げて、それがどのように落ちたかによって、解釈した。
その日、彼は占い棒を投げなかった。
彼は棒を布きれにつつむと、かばんにしまってしまった。
「わしはな、他人の将来を占って生計をたてているのだ」と彼は言った。
「わしは占い棒の科学を知っている。それを使って、すべてが書かれている場所とつながる方法も知っている。
そこで過去を読み、すでに忘れ去られていることを発見し、今、ここにある前兆を理解することができるのだ。
人がわしに相談に来る時、わしは未来を読んでいるわけではない。未来を推測しているだけだ。
未来は神に属している。
未来がわかっているのは神様だけだ。神様が未来を明らかにするのは、特別の事情がある場合だけだ。
どうやって未来を推測するのかだって?
それは現在現れている前兆をもとに見るのだ。秘密は現在に、ここにある。もしおまえが、現在によく注意していれば、おまえは現在をもっと良くすることができる。
そして、おまえが現在を良くしさえすれば、将来起こってくることもよくなるのだ。
未来のことなど忘れてしまいなさい。そして、神様は神の子を愛していると信頼して、毎日を神様の教えにそって生きるがよい。毎日の中に永遠があるのだ」
パウロ・コエーリョ
アルケミスト-夢を旅した少年-より
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