久しぶりに制作行程の話。
革のコバ(裁断面)の処理については以前にもお話ししておりますが、
今回は少し違った視点からご紹介します。
革の染色には大きく分けて、
革の内側まで染める”芯通し”と
革の表面だけを染める”ナカシロ”の二種類があります。
今回は特に後者のナカシロ(表面だけの染色の為、
断面が白い事からナカシロと呼ぶそうです)の革のコバ処理を説明します。
この処理方法はあくまでも私のオリジナルのやり方なので、
作り手によっては全く別の方法で行っていると思いますし、
革の種類によっても異なってきます。
上記写真の革はベージュベースの革の表面をグレーで染色しています。
左側の断面が白っぽいのがお分かり頂けると思います。
ちなみにこちらが芯通しの革です。
革の内側まで染色されています。
私が制作するバッグは、基本的に革の断面をむき出しにせず、
バスコというコバ仕上げ用塗り液で色を着けます。
この塗り液は革の内部に浸透する物ではなく、
表面に色を乗せているだけなので摩擦等で剥がれてしまいます。
剥がれた時、革の断面が白いより、革表面の色に近い方が
違和感無くご使用頂けるので、
下処理として下記写真のdrawing inkを使用します。
このインクはデザイン、描画に用いるもので、革用の資材ではありませんが、
革断面に浸透し、乾くと油性になり、また革用の染料より色数が豊富なので、
試行錯誤の末に辿り着いた道具です。
下記写真右側がこのインクで下処理した箇所です。
これで、仕上げのバスコが剥がれても白くならずにすみます。
スポイトになっているので、必要量だけ出せるのも嬉しいポイント。
drawing inkで下処理染色をした後、バスコ用の目止め液を塗り、布で磨きます。
この液は、この後に塗るバスコの定着を強くします。
その後グレーの仕上げ用塗り液(バスコ)を塗り、
写真はございませんが、さらに蜜ロウを塗り、
小型のアイロンで蜜ロウを溶かし、布で磨いてツルツルに仕上げます。
コバ処理は、商品になった時、真っ先に見られる箇所ではないですが、
地味に時間と労力を費やし、仕上がりをも左右する重要な作業です。
深夜の頭では、ちゃんと説明出来ているのか不安ですが、
一番お伝えしたかったのは、専用の道具、資材にとらわれず、
drawing inkに辿り着けて嬉しかった、というお話です・・・。
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